【美坂栞(以下、栞)】「『脱走と追跡のカノン・解説編』へようこそ! 解説は私、みんなのアイドルしおりんと……」
【天野美汐(以下、美)】「……アシスタントの天野美汐です。よろしくお願いします」
【栞】「最初に断っておきますけど、このテキストはKanonのSS『脱走と追跡のカノン』を解説するものなんです」
【美】「そのまんまなのですね」
【栞】「はい。このSSを読んでいないと意味不明なので、その点はご注意ください」
【美】「ですが、どうしてこの物語には『解説編』があるのでしょう?」
【栞】「それは、某所で『パロディを使ったSSは、元ネタを示しておくべきではないか』という助言を頂いたからなんですよ」
【美】「……確かに、『脱走~』は少々分かりにくいパロディネタが満載ですね」
【栞】「分からない読者さんを不愉快にさせてしまう可能性があり、事実そう思われた方もいらしたようですから。ここで解説しても、あんまり意味はないかもですけど……」
【美】「できうる限りのフォローをしておく、ということですか。しかし、逆に興醒めに感じられる方もいらっしゃるのではありませんか?」
【栞】「えっと、その場合には、平にご容赦いただくしか……」
【美】「そもそも、安易にネタを使うからこういうことになるのですよ」
【栞】「そ、その通りなんですけど……。反省は次回作に活かすということで」
【美】「……分かりました。あまり前置きが長くなると問題ですから、解説に進むこととしましょう」
【栞】「はいっ。それでは最初のネタから」
【美】「まずはタイトルですね」
タイトル:脱走と追跡のカノン
【栞】「これは筒井康隆先生の長編小説、『脱走と追跡のサンバ』のタイトルをもじったものなんですよ。内容そのものは関係ないんですけど」
【美】「……いきなり大物ですね」
【栞】「凄まじいまでのスピード感を持った、筒井康隆先生の作品の中でも傑作だと思います。パロディ風味の不条理スラップスティック作品という意味では、ちょっと近い傾向のお話なんですけど、レベルは全然及ばないですねー。残念ながら」
【美】「ちなみに、『サンバ』を『カノン』に置き換えたのは、どういう理由なのでしょう?」
【栞】「まず二次創作元としての『Kanon』であることがひとつ、それから音楽用語の『追走曲』って意味も入ってます」
【美】「つまり、オチの部分にも掛けているということなのですね」
【栞】「はい。でも、このタイトルのせいでオチが分かっちゃった人もいたみたいです」
【美】「そのあたりは、善し悪しといったことろですか。それでは次、プロローグに参りましょう」
栞に薦められたヒカシューとかいうグループ
【栞】「『ヒカシュー』は実在のグループですね。確かテクノポップ御三家と言われたとか」
【美】「Kanon小説版だと、栞さんが『恐そうな感じの絵』がついたCDを手に取ったという記述がありましたが……」
【栞】「恐いかどうかは微妙ですけど、『パイク』や『スイカの行進』なんかは凄くインパクトのある曲ですねー」
【美】「ウォシュレットのCM曲もありました」
【栞】「えっと、美汐さんって私と同い年のはずなのに、どうしてそんな古いことを知ってるんですか?」
【美】「……次、行きましょう」
「話せば長くなるんだけど……」
【栞】「あゆさんの台詞ですね。特に説明の必要はないと思いますけど、本編で祐一さんとあゆさんが出会うシーンのパロディになってます」
【美】「原作では『全然長くなかった。しかも、複雑でもなかった』と落とすわけですが、このSSでは本当に長くて複雑なのですね」
【栞】「はい。でも、実際長かったせいで、中弛みを感じられた方が多かったみたいです」
【美】「匙加減が難しいものです」
【栞】「それでは、いよいよ本編、あゆさんの独白部分に入りまーす」
「ワンオブサウザント!」
【美】「これは北条司先生の漫画、『シティハンター』がネタですね」
【栞】「はい、コミック第5巻収録のお話です……けど、ちょっと間違っちゃってますね。正確には『ワン・オブ・サウザンド』でした」
【美】「きちんと確認せずに書くから、こういうことになるのですよ」
【栞】「全くです。『シティハンター』ではもちろんたい焼きではなく、拳銃のお話ですね」
【美】「たい焼きの精度が良くても、役には立ちそうにもありませんから」
この世で二匹目の平面ガエルを作ってしまうところだった
【栞】「この前後の部分は、TVアニメ『ど根性ガエル』がネタになってますー。元気な少年のひろし君と、ひろし君のシャツに張り付いた平面ガエルのピョン吉君の、下町人情ギャグアニメです」
【美】「ケロ吉君(仮名)はピョン吉君の二代目、というところなのでしょうか」
【栞】「ちなみに、石につまずくところから『ど根性ガエル』ネタに入ってるんですよ」
【美】「原作ではひろし君が石につまずいて転び、ピョン吉君がシャツに張り付いてしまうのでしたね」
光が消えると、泉の上には女の人が宙に浮かんでいた
【栞】「ここは有名な童話の『金の斧、銀の斧』からです。泉に斧を落としてしまった樵さんが困っていると、中から泉の女神様が……ってお話でしたよね」
【美】「元のイソップ童話では、斧を差し出すのはヘルメスという伝令の神様なのですよ。日本では女神様や精霊として書かれることが多いようですけれども」
【栞】「そうなんですか……。それは知りませんでした」
そんなの塩水ばかりでふやけちゃってるはずだよ
【美】「これは歌詞がネタですね」
【栞】「そうなんです。子門真人さんの歌う大ヒット曲『およげたいやきくん』から、です」
【美】「歌だと、たいやきくんを海釣りしたおじさんは、元のたい焼き屋さんとは別人のようなのですが」
【栞】「はい。釣って食べたたい焼きに感動したおじさんは、たい焼き職人に転職して私達の街へやってきた、という裏設定なんですよ」
【美】「なんだか、まわりくどいのですね……」
それは例えるなら、地球が正体不明の敵と戦うことになって、スーパーシルフ級戦闘機で偵察しなくちゃならなくなるような、そんな恐ろしい味のジャムだった
【栞】「ジャムネタ第一弾ですー。パロディ元は神林長平先生のSF長編小説、『戦闘妖精・雪風』でした。超高性能戦闘機・雪風と、それを取り巻く人々、そして謎の敵を描いた物語です。OVAにもなったようですね」
【美】「何故、ここでそんなネタが出てくるのでしょう?」
【栞】「それはですねー、この小説に出てくる謎の敵が『ジャム』と呼ばれているからなんです」
【美】「……もしかしたら、相当に安易なのでは?」
【栞】「うっ、それは否定できないかも……」
たい焼きの鱗の一枚一枚には七人のお侍さんが宿ってるって、昔から言うしね
【美】「これは、二重パロディですか」
【栞】「はい、そうです。元になるのは『お米の一粒一粒には七人の神様が宿っている』という言葉ですね。『お米は大切に頂きましょう』というときに使われますから、聞いたことがある方も多いんじゃないかな?」
【美】「で、そこに黒澤明監督の名作映画、『七人の侍』を引っかけてあるのですね」
【栞】「七人のガンマンだったり、七人の宇宙戦士だったりしてもよかったんですけど、宿られて一番嫌なのはやっぱりお侍さんかな、と」
【美】「そんな理由なのですか……」
気がつけば、ボクの近くには大きなお城があった
【栞】「ここは特にパロディというわけではないですけど、エピローグのネタに繋がっている部分ですね。実は、直前の『ファンタジーの世界』という一文でミスリードを狙っているらしいです」
【美】「この程度でミスリードを名乗るのは、他の作家さんに失礼というものでしょう」
【栞】「確かに……。ちなみに、件のお城は5層7階建、石垣から上の高さは約36メートルとのことです」
身長は57メートル――あったかどうかは分からないけど、体重はたぶん550トンじゃきかないだろうから
【美】「この57メートルというのは、どこから来たのですか?」
【栞】「これはですねー、TVアニメ『超電磁ロボ コンバトラーV』に出てくるスーパーロボット、コンバトラーVさんのサイズなんです。エンディングで『身長57メートル、体重550トン』と歌われてますから、憶えやすくていいんですよ」
【美】「別に憶えてもいいことはないと思うのですけれど」
【栞】「それを言い出すと、この『脱走~』のネタは全てそんな感じですから」
【美】「……分かりました。ここであゆさんが57メートルだったとすると、元の身長が154センチメートル、体重が41キログラムですから、ええと……単純計算で2000トンを越えることになりますね」
【栞】「はい。コンバトラーVさんって軽量化が図られているんですよ、きっと」
【美】「そうなんでしょうか……」
「片方で背が伸びて、反対側で背が縮むってやつ。たしかそれはキノコだったけど」
【栞】「真琴さんの台詞ですー。これはルイス・キャロル先生の小説『不思議の国のアリス』からのネタになります」
【美】「……真琴も漫画だけではなく、本も読むようになったのですね」
【栞】「考えてみると、『アリス』も不条理系のお話ですね。やっぱり比較するまでもなく、及ばないですけど」
あたかも高性能戦闘機の雪風に「あんたとはもう、ようせえへんわ」って見捨てられて、「それって妖精の駄洒落?」ってボケたらハリセンで思いっきりはたかれちゃうような、それほどまでに恐ろしいジャムだったんだよ
【美】「またジャムネタですか……」
【栞】「第二段もやはり『戦闘妖精・雪風』からです」
【美】「これはまた、相当にベタなギャグなのですね。『見捨てられて』のくだりが良く分かりませんけれど」
【栞】「そこは『雪風』自体のネタバレになりかねませんから、興味がおありのときは実際に読んでいただくのがいいと思いますよ」
【美】「本当にそれがネタバレしているのですか?」
【栞】「さあ……?」
【美】「……」
「……私は煮物に打つものだから」
【栞】「これも説明はいりませんね。本編パロディ、舞さん登場時の台詞を変化させたものです」
【美】「かなりひねったパターンですね。単独だと完全に意味不明ですし」
【栞】「そうですねー。大概のものは使われてしまってますから」
「そう。『金なら一つ、銀なら五つ』、だよ」
【美】「名雪さんの台詞ですね」
【栞】「これはお菓子のチョコボールに付いているくじ、『オモチャのかんづめ』ネタでした」
【美】「どうして金銀のアイテムが不思議な力を持っているのか、聞いてはいけないのでしょうね」
【栞】「えっと、それは秋子さ……ゲフン。聞かない方が身のため、です」
【美】「なるほど……。私も小食ですから、格別興味はありませんし」
【栞】「むっ、そう言えば本編でそんな台詞がありましたねー。私だって小食なら負けませんよ」
【美】「張り合っても仕方がないと思うのですが。そもそも、栞さんは健康のためにもう少し召し上がった方がよろしいのでは……」
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ」
【栞】「たい焼き屋さんの言葉は、特撮TV番組『仮面ライダーストロンガー』で、ストロンガーさんが登場するときに使う決め台詞ですー」
【美】「そうすると、たい焼き屋のおじさんは仮面ライダーなのですか?」
【栞】「はい。たい焼きを釣り上げて転職する前の職業なんですよ」
【美】「もう訳が分かりませんね……」
【栞】「人数が半端ですけど、一応他の人達も同じです。とりあえず、百花屋のウェイトレスさんはライドル使いという裏設定でした」
【美】「ライドル、と言うと?」
【栞】「Xライダーさんですね。あ、変身は後期の『大変身』ではなく、『セタップ』じゃなきゃ駄目です!」
【美】「何と言いますか……栞さんもずいぶん古い話を知っているのですね」
【栞】「私は解説者という立場ですから」
【美】「……それはちょっとズルいのではないでしょうか」
微妙にスケールが小さかった
【栞】「これはネタとしてはちょっと弱い部分なんですけど……」
【美】「と言うと?」
【栞】「ストロンガーさんは主題歌で、日本の平和を守ると歌ってるわけですが、1号・2号ライダーさんは世界の平和を守るために戦っているんですよ」
【美】「はあ……」
【栞】「昆虫の王様、カブトムシをモチーフにした最強のライダーにしては、なんだかスケールが小さいんですよね……」
【美】「他の方々が別の国で活躍されているから、ということなのでは」
【栞】「そうかもしれないですけど、やっぱり『最強』を謳うからには太陽系とか、銀河系ぐらい守ってほしい感じがしません?」
【美】「別のヒーローにお任せした方が良いと思うのですが」
横に超電子って書かれた紙が貼ってあったんだよ
【栞】「美汐さんはこのネタ、分かりますか?」
【美】「ええと、超電子ということはスーパー戦隊モノの『超電子バイオマン』、でしょうか」
【栞】「残念でした。まだここは仮面ライダーネタを引っ張ってます。発電機を英語で言うと……」
【美】「ダイナモ?」
【栞】「はい。おじさんは超電子ダイナモを使ってチャージアップ、つまりストロンガーさんと同じく二段変身するんです。危険ですから良い子の皆さんは真似しないでくださいね。一分以内に変身を解かないと体が爆発しちゃいますから」
【美】「……それ以前の問題のような気がします」
「○ケットぱぁーんち!」
【栞】「これは比較的有名だと思いますけど、TVアニメ『マジンガーZ』に登場するスーパーロボット、マジンガーZさんの武器の一つですね。腕から先が飛んでいき敵を攻撃する、『ロケットパンチ』です」
【美】「思うに、ロケット推進によってミトンが飛んでいくのだとすると、あゆさんの手首は黒コゲになってしまうのではないでしょうか?」
【栞】「それは、その……」
【美】「それは?」
【栞】「ファンタジーだからいいんです!」
【美】「逃げましたね」
【栞】「えぅ……」
エスキモーの人たちが使う遮光器と同じで、雪目を防ぐための生活の知恵なんだよ
【美】「これは解説の前に補足が必要かもしれませんね」
【栞】「あ、そうでした」
【美】「この台詞では『エスキモー』という呼称を使っていますが、果たしてそれは適切か否か、という部分です」
【栞】「読んでくださった方からも指摘されたところですねー」
【美】「ええ。まず『エスキモー』という呼称は、1993年から1994年あたりに学校教育では原則として使われないことになったようです。代わりに『イヌイット』と表記するようになったとか」
【栞】「ふむふむ。それはどういった経緯からなんですか?」
【美】「これが、良く分からないのですよ。実際、カナダにおいては『エスキモー』は差別用語であるという認識が強いようなのですが、逆にアラスカ等では『イヌイット』と呼ばれることを嫌い、正式に『エスキモー』を使っていたりするらしいのです。文化的に『イヌイット』とは異なる、『ユイット』等の方々がいらっしゃるようですし」
【栞】「……なんだか、複雑な話になってきましたね」
【美】「どうも日本では『エスキモー』は蔑称であるという認識が社会的に定着してしまい、これが文部省を動かすことになったのではないか、等の見方があるようです」
【栞】「けど、『イヌイット』も総称としては正しくないってことなのかな?」
【美】「そうですね。『エスキモーやイヌイット』と列記するあたりが無難のようです」
【栞】「難しいんですね。このお話ではあゆさんの経緯や原作の発売時期、リズム感の問題から『エスキモー』のみとしちゃったわけなんですけど……」
【美】「もし上記の認識に誤った点があり、『エスキモー』という表記に問題があるとなれば、訂正するべきかもしれません」
【栞】「なるほど……。では、そのあたりの話はここまでにして、解説に行きましょうか」
【美】「分かりました」
【栞】「これはKanon本編での、名雪さんの立ちグラフィックから来ているネタですね。名雪さんはヒロインの一人でありながら、糸目状態のグラフィックがあるわけですけど、この理由を鋭く掘り下げた野心的な解釈と言えるでしょう」
【美】「……全く違うと思いますが」
【栞】「えっと、エスキモーやイヌイットの方々の使う道具として、遮光器というものがあります。スリット状の穴が空いたゴーグルのようなもので、これを付けると光の量を減らすことができるため、雪目にならないんですね」
【美】「そう言えば、『遮光器土偶』どいう縄文時代の土偶がありました。目の部分が遮光器に似ているからそう呼ばれたとか」
【栞】「ありますねー。つまり名雪さんもその遮光器と同じ原理で、目を細めることにより雪目を防いでいると考えられるわけなんです」
【美】「それは大胆に過ぎる仮説なのではないでしょうか?」
「必殺、ねこさんミサーイルっ!」
【栞】「これも実はマジンガーネタなんですねー」
【美】「ええと、マジンガーZの技なんですか?」
【栞】「いえ。同じマジンガーでもマジンガーZさんではなく、TVアニメ『グレートマジンガー』の主役ロボ、グレートマジンガーさんでした。お腹から飛び出す『ネーブルミサイル』が元ネタです。炎を呼ぶんですよ」
【美】「『ね』しか合っていないではありませんか……」
【栞】「気のせいですっ」
「あんまり、噴水の水は口に入れないほうがいいと思うよ」
【美】「いよいよ、栞さんの登場ですね」
【栞】「うぅ……」
【美】「栞、さん?」
【栞】「あうぅ……」
【美】「……それでは、私が解説いたします。これはTVアニメ版Kanonのオープニングを揶揄した台詞でした。件の映像では、栞さんが噴水の水を口に含むシーンが存在するわけなのですが、おそらく視聴された方々のうち推定一億二千万人が、『おいしそうな表情』と受け止めたものと思われます」
【栞】「そんなにいません! 大体、あの部分は凍てつく冬の冷たさとか、私のお茶目さを象徴的に表したシーンなんですから、気にしちゃいけないんです!」
【美】「開き直りましたね。ですが、甘み成分が含まれている水となれば、冬でも雑菌が繁殖してしまう可能性は否定できないのではありませんか? 不用意に舐めるのは感心できませんが」
【栞】「美汐さんは現実的すぎます!」
【美】「いや、そうでもないよ」
【栞】「そうですか? ……そうですよね」
【美】「……」
【栞】「結構、ノってくれますね。美汐さんも」
【美】「……うぅ」
「辛(から)いのは現実でも嫌です!」
【栞】「これも、Kanon原作からのパロディですね」
【美】「『辛い』の読みが二種類あることを掛けたネタですか」
【栞】「……自分で言っておいてなんですけど、これってかなり安直ですよねー」
【美】「確かに。誰もが思いつきそうなギャグではあります」
【栞】「もう少しひねるべきだったのかも……」
「それは悪の枢軸も同然の人たちですから」
【美】「時事ネタですね」
【栞】「はい。アメリカの第43代大統領、ジョージ・W・ブッシュさんの言葉が元になってます」
【美】「そうすると、これは『かの国』を指しているということなのですか?」
【栞】「たぶん……。あんまり深い意味はないんですけどね」
【美】「しかも、時事ネタは風化が早そうですし」
「ジェット○クランダー、です」
【栞】「またマジンガーネタですー。今度はマジンガーZさんの翼、ジェットスクランダーですね」
【美】「しかも伏せ字ずらしギャグを併用していますし」
【栞】「そこは安易だったかもです。ともかく、マジンガーZさんは元々空を飛ぶことができなくて、後にジェットスクランダーと合体して飛行可能になるわけなんです」
【美】「しかし、ジェットは翼の根元から吹き出すのですよね。やはり背中が黒コゲに……」
【栞】「気にしちゃ駄目ですってば!」
「ボク別にお父さんと戦ったりはしないんだけど……」
【美】「この『お父さん』というのは?」
【栞】「セガさんのアーケードゲーム、『ファンタジーゾーン』ですね。パステル調の可愛いシューティングゲームで、ラスボスが主人公オパオパさんのお父さんでした」
【美】「なるほど」
【栞】「ちなみに直前の私の台詞にある、『ビッグウィング』/『ロケットエンジン』/『7ウェイ』はゲーム中のアイテムですね。様々な家庭用ゲーム機にも移植されましたから、プレイしたことがある方も多いかもしれません。しかし……」
【美】「どうかしたのですか?」
【栞】「NECアベニューから発売される予定だったPCエンジン用ゲーム『スペースファンタジーゾーン』は、延期延期の末に結局発売されませんでした。がっでむです、多部田さん!」
【美】「ちょ……栞さ……」
【栞】「ゲームプロデューサにならずに、多部田さんは『月刊マイコン』でずっと四コマ漫画へ出演していればよかったんですよ!」
【美】「そ、それ以上はいけません! 多部田氏は後のNECインターチャネルでKanonのドリームキャスト移植にご尽力くださるわけですから、言わば大恩ある御方。ここは抑えてください」
【栞】「……はっ。そうですね、ちょっと取り乱しちゃいました……」
【美】「いろいろと事情がおありなのでしょうから、仕方のないことだったと諦めましょう」
胸に『中』のマークを張りつけた、某米国英雄よろしく
【栞】「ついにエピローグ部分へ突入ですね。これは海外ドラマ、『アメリカンヒーロー』が元ネタになってます。原題は『The Greatest American Hero』、パラマウント制作です」
【美】「……」
【栞】「? えっと、高校教師のラルフ・ヒンクリーさんがある日UFOと接近遭遇し、『地球を救え』と赤いスーパースーツを与えられるんですが、取り扱い説明書をなくしてしまったばかりに大変な目に遭う、という感じのお話です。一緒に居合わせたFBI捜査官のビル・マックスウェルさんとともに、苦労をしながらも様々な事件を解決していくという、コメディタッチの楽しいドラマです」
【美】「……」
【栞】「ラルフさんは痩せ型で、赤いスーツを着込んだ姿はお世辞にも格好良くはないんですよね。正しい飛び方が分からないので、いつもふらふらしながら飛んでましたし。でも、懸命に頑張るラルフさんは、等身大のヒーローとして好感が持てるキャラクタでした」
【美】「……青びょうたんのラルフは、どうでもいいのです」
【栞】「えっ?」
【美】「このドラマは、FBI捜査官のビル様こそが主役。全身赤タイツのUFOマンなど、余録なのですよ!」
【栞】「そ、それは確かにビルさんはもう一人の主役ですが、特別な力は何もありませんし。第一、FBIでもわりと落ちこぼれの部類だったような……」
【美】「分かっていませんね栞さん。そこもまた良し、なのですよ。尊大で身勝手でいい加減でへっぽこなわけですが、やるときはやる御方。それがビル様なのです!」
【栞】「なんだか、誉めてるのか貶してるのか微妙ですねー」
まるでマリーなんとやらという船の怪事件のようだな
【美】「これは分かりました。『マリー・セレスト号の怪事件』ですね」
【栞】「そうですー。1872年、海上を漂流していたマリー・セレスト号が近くを通りがかった船に発見されるわけですが、このとき船は完全に無人だったにも関らず、コーヒーの湯気が立っていたり、赤ちゃんのミルク瓶が飲みかけだったりと、ついさっきまで人がいたような形跡が残っていたという不思議な実話です。船に乗っていた方々は結局行方知れずのまま、迷宮入りになってしまいました」
【美】「確か『シャーロック・ホームズ』で有名になる前のコナン・ドイル氏が本に書いたことにより、多くの人々が知るところになったのでしたね」
【栞】「そうみたいです。大海獣に襲われたとか、宇宙人拉致、人体発火のようなオカルト系の説明や、推理小説ばりの謎めいた陰謀説なんかがいっぱい出されたみたいですけど、素直に考えて一番怪しいのは、やっぱり発見者の船員さん達なんですよね。でも、追求を受けたものの、証拠不十分で全員釈放されたようです」
【美】「真相は闇の中、ということですか……」
「まさかシャチホコを真琴にくれてやったのか……?」
【栞】「ここでお城のネタが明らかにさせるわけですねー。一応、このお話でのメインになるギャグと言えるかもしれません」
【美】「この箇所も指摘がありました。あゆさんが巨大化した時点で登場人物たちが中部地方へ移動してしまうことになり、さすがに不条理が過ぎるのではないかと」
【栞】「これに関しては、SSに盛り込めなかった裏設定があったんですよ。この『脱走~』の世界は、不思議時空発生装置により、辺り一帯が不思議時空になってしまっているんです。このせいで、空間の繋がりもおかしくなってしまったわけなんですね」
【美】「不思議時空……ですか」
【栞】「はい。特撮TV番組、『宇宙刑事シャイダー』からのパロディネタでした。不思議界フーマの方々が、シャイダーさんとの戦いのときに発生させるものです。不思議時空では、敵である不思議獣さんのパワーが4倍になるんですよ」
【美】「何故そんな装置があったのでしょうか?」
【栞】「えっとですね、倉田財閥の総力を結集して作り出されたことになってます。作られた理由は……不明としておくのが良さそうです」
【美】「……分かりました。ですがお話中で語られなかった以上、あまり意味はありませんね」
【栞】「そうですねー。『空間の繋がりがおかしい』の一文ぐらいはあって良かったかもです。話を戻しますが、祐一さんはお城の真の姿をTVで見て知るわけなんですけど、その『祐一さんの見た衝撃映像』をこちらに用意してみました」
【美】「なんだか、ずいぶんとヘタレ絵のように見えますが」
【栞】「どこぞのシステムエンジニアさんが、出荷前バグチェックと称して、仕事中に自作のペイントソフトで落書きしたものですから」
【美】「……栞さん。その発言は少々危険なのでは?」
【栞】「レイヤー機能とかフィルタとかのチェックになったのは確かですけどね。でも、ここだけの秘密ですよ♪」
リビングにあるはずのないもの
【美】「いよいよ最後のネタですか」
【栞】「はい。お話の『オチ』部分です!」
【美】「これは冒頭にもあった通り、タイトルに引っかけた回帰的オチなのですね」
【栞】「そうなんです。『追走曲』的な繰り返しを予感させ、お話は終わります。ここは面白いと感じていただいた方、面白くなかった方と評価が別れたようです」
【美】「少々、古典的過ぎたのが問題だったのでしょうか」
【栞】「それはあるようですねー。また、落語的なストンとした落とし方を狙ったわけなんですけど、それが物足りなさに繋がったのかもしれません」
【美】「文章力という課題もありますし。やはりギャグを書くというのは難しいものですね」
【栞】「以上、解説はこれでおしまいですっ」
【美】「指摘していただいたお話の中弛み感や、パロディネタ自体の意義などの反省点は、以後の作品に活かしていく所存ですので」
【栞】「『脱走と追跡のカノン』、そしてこの『解説編』を読んでいただいて本当にありがとうございました」
【美】「それでは、また次にお会いする日まで……」
【栞・美】「さようならー」
・次回予告(嘘)
(【栞】「実はSSの没ネタなんですよ」)
君達に最新情報を公開しよう!
ついに参戦した祐一により、戦いは六つ巴の様相を呈し始める。
そして新たなる犠牲者を求め、北川の前に現れる謎の泉。しかし、女神は未だ気付いていない。彼の触角は、最初から金色なのだということに。
さらに、道端へ打ち捨てられた謎たい焼きに、空腹にかられた山犬が本能を無視してかぶりついたとき、何かが起きる……!
混乱の中、あゆは果たして第三のアイテムを手に入れることができるのか?
次回もこのサイトで、ファイナルフュージョン了承!
※これが勝利の鍵だ! : 美汐の友情、『おっ○いミサイル』
(【美】「そっ……そんな酷なことはないでしょう……」)
Fin.